広島大学ヨット部
創部70周年 記念事業
日 程
2019年8月11日(日) ~ 8月12日(月・祝)
場 所
広島市文化交流会館・広島観音マリーナ
日 程
2019年8月11日(日) ~
8月12日(月・祝)
場 所
広島市文化交流会館・
広島観音マリーナ
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アメリカズカップ観戦記

皆川 多郎
昭和32年入学
皆川 多郎

定年退職して年金生活になると定期的に海外旅行に行きたくなってきます。単なる団体旅行では名目が立たないので、近年はしぶき会会員で4年に一度、アメリカズカップ観戦のツアーに参加しています。

アメリカズカップ (America's Cup) は、1851年より現在まで続く国際ヨットレースです。その成立は近代オリンピックより45年、サッカーのワールドカップより79年、ゴルフの全英オープンよりも9年早いのです。このレースの様子はウイキペディアにて詳しく解説され、レースの動画はYouTubeで御覧になることが出来ます。レース艇の仕様もモノハル→トライマラン (三胴船) →カタマラン (双胴船) と変わってきて第36回の「AC75」はモノハルとなりキールも廃止されて船尾と両サイドにつけられた3個のT字型フォイルで船体を支える仕組みとなっています。最近の開催状況は以下の通りです。

  • 2003年 第31回 開催地 オークランド 優勝艇 アリンギ
  • 2007年 第32回 開催地 バレンシア 優勝艇 アリンギ
  • 2010年 第33回 開催地 バレンシア 優勝艇 BMWオラクル
  • 2013年 第34回 開催地 サンフランシスコ 優翔艇 BMWオラクル
  • 2017年 第35回 開催地 バーミューダ 優勝艇 ニュージーランド
  • 2021年 第36回 開催地 オークランド (予定)

アメリカズカップヨットレースは非常にお金がかかり高度の能力・体力を持つヘルムマン、クルー等が必要となり要員の奪い合いが各国スポンサーの間で行われてきました。アメリカのスキッパー、デニス・コーナーたちはその良い例です。

2007年第32回大会 Valencia

団体旅行扱いにするために15名以上の参加者を募集。当時NTTトラベル社所長の河田氏のお世話で立案・参加しました。定員を満たすために一部しぶき会以外外部の方の参加もありました。

スペイン・バルセロナに到着した当日夜、眠い目をこすりながらフラメンコの見学に行きました。翌日はサグラダ・ファミリア等を観光後、高速道路でバレンシアに向かいました。私にとっては初めてのアメリカズカップ観戦。まずはアメリカズカップビレッジの見学に行きました。ビレッジの中には予選に参加した各艇それぞれが艇庫・ショップを作ってショップではTシャツ、帽子等を販売していました。レース当日はNTTが手配した観覧艇の乗船券で大型観覧艇に乗船し、レース海面近くに行きました。当日の乗船チケットが我々の参加人数より3枚多く手配されていたので乗船場近辺で余分チケットをスイスの観戦者に販売して旅行代金の足しにしました。200人くらい乗船できる大型船のためレース海域には接近することは出来ず。スタートして後は上マークを回航して帰ってくるまで同じ場所にて待機して待つといった状況でした。レース艇を追いかけて行ってもレース艇のスピードが速いので追い付けないといったこともあります。むしろ、船内TVでレースの進行状況を確認できるようになっていました。

ホテルのロビーで、イタリアから観戦に来ているセーラーと交渉して彼の60フィートのヨットを一人$120.00で食事・飲み物付きで1日チャーターすることで交渉成立。決勝戦はこのチャーターヨットで観戦することになりました。スタート3時間前には乗船してマリーナからレース会場までセーリングしながら食事とドリンクを楽しみました。スタート1時間前にはニュージーランドチームのエミレーツ、スイスチームのアリンギがレース海面に現れ、それぞれが予備艇とチューニングの並走をする姿を間近に見ることが出来ました。チャーターヨットのスキッパーは観戦には慣れていて我々には「一番良い場所で見せてやるから」と約束をしてくれました。観覧海面は最前列が大口のスポンサー艇、その外が小型艇、その外側がオフィシャル大型観覧艇の3重に分けられていてレース前から運営艇が常に整理して回っていました。その間を我々の艇は隙間を抜けてゲリラ戦術で最前列よりも前に出て、指導艇から下がるように指導を受けると所定の位置に帰り、指導艇が見えなくなると又最前列に出るといった行動でスタートは非常に良いポジションで見ることが出来ました。

アメリカズカップビレッジでは各チームのウェア等の販売と総てのレースの状況をパブリックビューイングによって大画面スクリーンで見ることができました。ヘリコプターからレースは中継されるのでTVにて観戦するのが一番わかりやすい観戦方法でした。

第32回大会の優勝はアリンギがエミレーツを破って優勝しました。

2010年第33回大会 Valencia 優勝艇 BMW・Oracle

第33回大会は各参加者がチケットを購入し、2005年2月5日にスペイン・マドリッドのラファエロホテルに集合となりました。集合日翌日はマイクロバスを1日チャーターして中世の面影を残すグレコに愛された古都世界遺産のトレド寺院、美術館、王家離宮の城下町をトロリーで見学。夜は豚の頭が丸焼きで出てくるレストラン「Botin(ボティン)」で食事をした。マドリッドからは高速列車に乗ってバレンシアに向かった。

アリンギ(スイス)が優勝したにも関わらずスイスチームはレマン湖が基地ということでドバイ・アラブ首長国連邦とか開催地が点々としました。結局、前回と同じ場所、バレンシアで開催することになりました。その上、レース艇の規格もアリンギの双胴船とBMWオラクルの3胴船の対決となりました。

第32回大会の時に大型観覧艇に乗船したがレース海面に接近することができなかったので、52フィートのヨットを2日チャーターしました。チャーターヨットに乗船し食料、飲み物も満載してレース艇が通過するであろう海面で待機していました。なかなかレース艇が現れません。同乗者から「スタート個所に行ってはどうか?」との意見が出ましたが、アリンギ(前回優勝艇)の支援艇が近くにいるのでここを通過するであろうとの予測でありました。結局レース艇を見ることが出来ませんでした。今回のレースは三胴船のBMWオラクルと双胴船のアリンギの対戦でしたがBMWオラクルの優勝となったと言うことを後程聞きました。この度からはレース艇のスピードが速くなり観戦の方法も変わってくると言うことでした。この時もアメリカズカップビレッジでテレビによるレース観戦が安価で良く見える方法であることが分かりました。

2013年第34回大会 サンフランシスコ 優勝BMW・Orecle

第33回の優勝戦は双胴船(アリンギ)と三胴船(BMWオラクル)の対戦でしたが今回は双胴船同士の対決となりました。しぶき会参加者はサンフランシスコのフィッシャマンズ・ワーフにあるホテルを確保しここを行動の中心としました。レースの行われる日には海岸の観覧席から観戦したり、大型観覧艇の乗船券を$450。00ドルで購入して船上で食事とドリンクを楽しみながら観戦したりしました。というよりはドリンクの方が中心になった方が多かったかもしれません。今回のレース艇の仕様は双胴船で70キロのスピードで帆走する艇を追いかけるのは至難の業です。むしろTVで観戦する方が良いようでした。毎晩フィッシャマンズ・ワーフ近くのレストランにてシーフードを堪能して、レースのない日はヨセミテ公園、ナパバレーのワイナリー等の観光を楽しみました。最後のレースを見ないで当地を離れましたがBMWオラクルがエミレーツを逆転して優勝したのには驚かされました。レース期間は非常に長くなりますが最後まで見なければ分からないということでした。

サンフランシスコではシリコンバレーで成功された日本人の菅野さんと知り合いになり赤ちゃんが指を挟んで怪我をしたときには大変お世話になりました

2017年第35回大会 Bermuda 優勝 Emirates

第35回の開催地バミューダ諸島は英国の植民地で人口は約65,000人の気候は温暖な島です。ネットでホテルを検索してみましたが、アメリカズカップが開催されると言うことで多くの観戦客が殺到してホテルの確保が難しいことが分かりました。そのうえホテルも途方もない価格になっていました。いろいろ検索してみますと、ニューヨークからボストン経由でバミューダ諸島に行き、現地に4日停泊してニューヨークに帰港する「セレブリティー・サミット」のクルーズ船を 利用が出来ることが分かりました。最終レースを観戦出来るスケジュールに設定してありました。このときの参加者は広島から3人、大阪から2人と確定し、広島組は3人1室バルコニー船室で契約しました。

クルーズ船は2,000人が乗ることのできる少し古い船でした。参加者5人で6月18日朝、ケープ・リバティ港の乗船口に到着しました。ネットでチェックインを済ませていましたので書類の確認を済ませて乗船カードを受け取り、指定された部屋に入りました。午後の出港まで時間がありました。船内を自由に見学して回りましたが、12階分フロアをくまなく見学するには結構時間がかかりました。出港前に全員避難訓練があり、緊急の場合の集合場所と乗船する救命艇の場所の確認がありました。レストラン、スナックではソフトドリンク、食事はフリーで、アルコールは乗船カードに付けてもらいます。夕食は午後6時と8時がありますが6時からの食事でお願いしてメインダイニングルームの海が良く見えるテーブルを予約して部屋に帰りました。ベランダ付きの部屋を予約したので8階の部屋から毎日日の出、日の入りが良く見えました。

ケープ・リバティ港 を出港して翌朝はボストンに到着、市内と近郊の一日観光をすることもできました。午後5時にはバミューダ諸島に向けて出港です。

バミューダ諸島はサンゴ礁に囲まれた島で、周りにサンゴ礁の障害物が多くあり直接の入港はできません。島の周りに設置してあるブイに従って案内船の後ろについて入港しました。島影が見えてから着岸するまでずいぶん時間がかかりました。港には既に我々が乗船していると同様のクルーズ船が数隻停泊していました。バミューダ諸島は大西洋の中のクルーズ船が頻繁に立ち寄る島の一つで、受け入れ施設、島内の観光等も充実していました。

3人部屋一人の金額は約160,000円(食事代金は含む)、ニューヨークまでの飛行機賃142,950円(往復)。この金額で9日間、船上で楽しく過ごすことが出来ました。クルーズ船を利用したために時間はかかりましたが、お陰でバミューダ諸島、ボストン、ニューヨークの観光もできました。バレンシア、サンフランシスコにヨットレース観戦で行きましたが、今回のバミューダ諸島での観戦が今までの中で最も充実した旅行となりました。船上では毎晩エンターテイメントが開催されていました。手品、バンド演奏もあり、大きな劇場で毎晩、食後に観劇しました。もっと大きなクルーズ船になればアイススケートリンクも備えています。航海中、私はサウナで裸の国際親善をして、ジムで運動したりプールで泳いだりしました。レース観戦はクルーズ船の10階食堂からフィニッシュラインが真下に見えるテーブルに陣取り、船上のテレビ画面でも実況放送が行われていました。デッキに寝転んでアルコールを飲みながらの観戦も楽しかったです。停泊場の隣には昔の砦跡があり、史跡として保存されていました。ここではアメリカズカップビレッジには行けませんでしたが、停泊場のショッピングセンターで多くの関連ウェア等を販売していました。英国の植民地でありながらアメリカの影響が強く、米ドルが主流でした。各国の船舶、ヨットが集まり国際色の強い国でした。

最終レースでエミレーツがBMWオラクルを破って優勝しました。エミレーツは足でウインチを回し、BMWオラクルは手でウインチを回していました。この差が勝敗に表れたとの評もありました。

サンゴ礁の湾内にコースが設定されたために、時にはレース艇が島影にさえぎられて見えなくなりますが、セールの上部は島の上に確認することが出来ました。

2021年第36回大会は、第35回でエミレーツが優勝したのでニュージーランドのオークランドで開催されるように準備が進められています。オークランドに行くクルーズ船に乗ってレースを観戦し、オフの時は上陸してニュージーランドの観光が出来ればと考えています。それにはまずは健康であることが第一で、常に体調には気を付けています。海外旅行もこのように観戦という目的をもって行くと楽しさが倍増します。ぜひ次回は皆さんも参加してください。